社会保険労務士法人 福岡労務 最新情報 TOPICS    

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同一労働同一賃金(基本給➀)

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賃金の付加的部分を除いた基本的部分が基本給であり、賃金総額に占める割合からも、また支給時の安定性からも賃金体系の根幹をなしているといえます。
また、会社ごとの人事政策上の考え方により、年齢給、職能給、職務給、役割給、業績・成果給といった基本給の性格も様々であり、正社員は月給制、パートタイマーは時間給という具合に賃金の捉え方も異なる場合が少なくありません。

基本給に関する均等・均衡待遇について、同一労働同一賃金ガイドラインでは、正社員と非正規社員とで、基本給の決定基準(能力、経験、業績、成果、勤続年数など)に照らし、その決定基準において同じなら同じ基本給を、一定の違いがあればその違いに応じた基本給を支給しなければならないとしています。


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しかし、実際には正社員と非正規社員とでは、例えば、正社員は職能給、非正規社員は職務給といったように、基本給の決定基準が異なるケースが多いといえます。
こうした場合の対応に関して、ガイドラインでは「通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間で将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なる等の主観的又は抽象的な説明では足りない」と述べるにとどまっています。

また、これまでの裁判例をみる限り、「職務の内容」、「職務の内容、配置の変更の範囲」などに違いがあることから基本給の相違が不合理と判断された事案は見当たりません。(例外的に、産業医科大学事件では正規職員と臨時職員の基本給で約2倍の格差について、臨時職員が30年以上の長期勤続だったことなどを理由に不合理と判断しています。)

なお、月給制と時給制の違いに関しては、ともに賃金の定め方として一般に受け入れられていることや、短時間勤務者に適した時給制の採用は不合理とはいえない(大阪医科薬科大学事件)とされており、会社ごとの人事施策であるとして不合理であるとまでは判断されることはなさそうです。

基本給の違いを裁判所が不合理な相違とまで判断することは少ないのが現状ですが、かといって正社員・非正規社員間で賃金水準に大きな差が生じていれば違法となる可能性が無いわけではありません。

会社の対応としては、自社の正社員と非正規社員について、基本給の決定基準が異なる場合であっても、その相違が合理的なものであることを検証しておく必要があります。

(福岡労務ニュース2021年2月号の記事を再構成しました。)

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2021年2月号の主な内容
求人票記載内容で労働契約は成立するか?
在宅勤務者(テレワーク)のルーズな働き方が気になるが法律的に問題ないか?


  1. 2021/01/22(金) 16:25:31|
  2. 同一労働同一賃金
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副業・兼業 自社としての対応の検討を

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2020年は副業・兼業をスタートさせる環境整備が進んだ年でした。大手IT企業など一部の企業では、新たな人材を副業で取り込んだり、社外での業務経験を人材育成の一環として捉えたりするなど、副業を巡る新たな動きも出てきています。一方、働く側もテレワークの定着によって通勤地獄から解放され、働き方を自分で管理しやすくなった人の中には、新たに興味のある仕事にチャレンジしたり、収入を増やすために副業に関心を寄せる人も増えてきています。

政府が原則、副業を認めたのは、2017年の働き方改革実行計画においてであり、そのための環境整備として労災・雇用保険の制度改正が進められてきました。

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昨年8月以降、副業の場合でも雇用保険の基本手当が受給しやすくなりました。受給資格要件である被保険者期間の算定方法が柔軟化され、月80時間以上働いた月も1か月として算定されるようになりました。また、昨年9月には労災保険法が改正され、給付額の算定方法が見直されました。それまでは労災事故が起こった事業所から得ていた賃金で給付額を算定していましたが、すべての勤務先の賃金を合算して算定されるようになりました。

さらに昨年8月には厚労省から新たな残業時間管理の指針が示されました。労基法では企業に従業員の労働時間を管理する義務があり、副業により複数勤務先がある場合には労働時間を通算する必要がありますがこれは現実的ではありません。そこで、副業する従業員が本業・副業先企業にそれぞれ残業の上限時間を事前申告すれば、企業はその上限時間さえ守れば、副業先の残業時間が規制の上限を超えても責任を負わないとされました。

副業を巡っては今後、いろいろな問題が噴出してくる可能性がありますが、副業を希望する従業員から申出があった場合、どのように対応するかについて検討しておく必要があります。

副業する従業員の割増賃金を負担しなくてすむようなルール作りや、許可基準などを整備しておいた方がいいでしょう。

福岡労務ニュース2021年1月号の記事を再構成しました。
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  1. 2020/12/17(木) 18:29:52|
  2. 副業・兼業
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最高裁判決 賞与・退職金で非正規側敗訴

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「同一労働同一賃金」を巡る複数の訴訟で、最高裁の判断が示されました。
 退職金支給を求めたメトロコマース事件、賞与支給を求めた大阪医科薬科大学事件の上告審は、どちらも正規・非正規間の不合理な格差の是正を求めたものですが、最高裁は「不合理とまではいえない」として非正規側が敗訴。また、同様に手当や休暇など5項目について格差是正を求めた日本郵政事件の上告審では、これらの待遇格差はいずれも違法であるとして、非正規側が勝訴しました。
 それぞれの最高裁の判決をみると、メトロコマース事件では、職務内容や配置転換などの違いが厳密に認定され、退職金制度設計においては企業の裁量を尊重する余地が比較的大きいとされました。
 賞与の不支給を争った大阪医科薬科大学事件では、アルバイト職員の職務は軽易で、配置転換もなく、正社員への登用制度もあったことなどが考慮され、不合理ではないとされました。

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 日本郵政事件では、正社員と多少の職務の違いはあっても、契約社員には継続的な雇用が実態があったとし、扶養手当、年末年始勤務手当、年始期間の祝日給、夏季・冬季休暇、有給の病気休暇についての格差は違法だとされました。
 賞与や退職金は金額が大きいだけに、非正規側の勝訴となれば企業経営への影響は大きかったものと考えられます。一方、是正を命じた手当や休暇などは、企業にとって比較的負担の軽いものでであり、企業への影響と格差是正のバランスを図ったようにもみえます。
 しかしながら、今回の判決において、性質や目的などの条件によっては退職金や賞与の不支給が不合理と認められることもあり得ると言及していることに十分留意する必要があります。

(福岡労務ニュース2020年12月号の記事を再構成しました。)
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  1. 2020/12/02(水) 13:43:37|
  2. 同一労働同一賃金
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働き方改革の実務 同一労働同一賃金④

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今回は均衡待遇を定めたパート・有期労働法8条の法解釈をみていくことにします。
均衡待遇を一言で言うと、「異なって働く者に対してもバランスの取れた待遇を」ということになります。
職務内容、責任、役割期待などにおいて非正規社員が正社員と全く同等に働いている職場というのは一般的ではありません。もちろん、職務の一部が正社員と重なることはあっても、職務の全体、責任、人材活用の仕組み、運用などは、正社員と非正規社員とで明確に区別されているのが普通と言えます。
ですから、職場において現実的に問題になることが多いのは均等待遇よりも均衡待遇の方だと言えるでしょう。
均衡待遇を定めたパート・有期雇用労働法8条は、パート・有期雇用労働者と正社員との間で、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、不合理な相違を設けてはならないとしています。(その対象となる待遇には、基本的にすべての賃金、教育訓練、福利厚生施設、休憩、休日、安全衛生、災害補償、解雇等のすべてが含まれるとされます。)

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そこで問題となるのは、不合理な相違をどのように判断するかですが、考え方は「個々の待遇ごとに、待遇の性質、目的に照らして、適切な考慮要素で判断する。」ということになります。
その際、非正規社員の待遇について、すべての正社員との間において不合理な相違があるか否かを判断することになるので、個々の待遇ごとに比較する正社員が変り得ることに注意する必要があります。
また、「待遇の性質・目的」については、事業主の単なる主観ではなく、客観的な実態を踏まえて判断することになり、「考慮要素」としては、➀職務の内容、②職務の内容・配置の変更の範囲、③その他の事情、などが挙げられ、待遇ごとに適切な考慮要素によって判断することになります。
それぞれの考慮要素の内容を示すと、➀職務の内容は、業務内容及びその業務に伴う責任の程度で、②
 職務の内容・配置の変更の範囲は、人材活用の仕組み、運用など、人事異動(転勤、昇進を含む。)や役割の変化の有無や範囲、③その他の事情は、➀②以外の事情で、個々の状況によって併せて検討する者となります。
例えば、役職手当は、それが特定の役職という役割に対して支給するものであるなら、考慮要素は「職務の内容」となり、同じ役職の正社員と非正規社員とで「職務内容」に相違があるかどうかを判断することになります。

(福岡労務ニュース2020年11月号の記事を再構成しました。)
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  1. 2020/11/27(金) 17:55:21|
  2. 同一労働同一賃金
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働き方改革の実務 同一労働同一賃金③

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「同一労働同一賃金」という言葉は、時には「同一価値労働同一賃金」の意味で使われることもあります。同じ労働に対して、性別や人種、年齢などの差別がなく、同じ賃金を支払うという考え方はとても明快といえます。ですから、ヨーロッパ諸国では産業別労働組合によって職務ごとの賃金水準が企業横断的に決定されており、これが労使間のルールになっています。
しかし、日本の場合には事情が少し異なります。終身雇用、年功序列、企業別労働組合を特徴とする日本型雇用慣行の中で、正社員の賃金は職業能力評価などによって決まる職能給が主流になっています。勤続年数とともに能力は高まるとされ、実際の職務に対してではなく、職能に対して賃金が決定されることから、同一価値労働同一賃金を即座に適用することは難しいとされているわけです。



日本において正社員と非正規社員との均等待遇を考える場合、正社員には職務内容、責任、役割期待といった非正規社員とは異なる人事賃金制度を適用しているわけですから、雇用形態の違いによって賃金に相違があって当たり前ということになります。しかし、こうした処遇の相違について争った裁判があります。(丸子警報器事件)判決では、一定の勤続年数が有り、職務内容が正社員と同視できる臨時社員の待遇について、会社の裁量の範囲を逸脱した正社員との賃金格差があったとして公序良俗に反するとしました。
その後、非正規社員の増加を背景に、こうした判例の影響などもあって、定められたのが、パートタイム労働法9条「差別的取扱いの禁止」(均等待遇)の規定です。現行のパート・有期労働法9条では、有期雇用労働者にも適用が拡大されたほかは、その解釈に大きな変更はなく、以下の2要件を満たすパート、有期雇用労働者については、すべての待遇について通常の労働者と同じ扱いをしなければならず、基本給、賞与その他の待遇について、差別的取扱いをすることが禁止されています。
➀職務の内容が通常の労働者と同じであること
②職務の内容・配置の変更の範囲が当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、通常の労働者と同一の範囲で変更されることが見込まれること
なお、差別的取扱いが禁止されるのは、パート、有期雇用労働者であることを理由とするものですから、客観的かつ公平な人事考課等によって個々の労働者について賃金水準に違いが生じることには問題はありません。

福岡労務ニュース2020年10月号の記事を再構成











  1. 2020/11/24(火) 17:33:46|
  2. 働き方改革推進関連法
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